建設業の特定技能は、もう枠が足りません|育成就労で増える企業負担と、技能実習が間に合う最後のタイミング

  • 建設分野の特定技能1号の受入れ上限は 76,000人。すでに 49,323人 が在留しており、残りは約26,700人分です。
  • 令和9年4月1日から始まる 育成就労 では、日本語講習100時間分の費用が受入企業の負担になります。
  • 建設分野の 転籍制限は2年。そのため 昇給が制度上の要件 になります。
  • 技能実習を手配できるのは、施行日(令和9年4月1日)までの経過措置に乗せられる案件だけです。残り約8か月(2026年7月時点)。

1. 建設分野の特定技能1号は「76,000人」で頭打ちになります

 建設分野の特定技能1号には、国として決めた受入れ枠があります。

 令和6年度から令和10年度末までの5年間で 76,000人。これが上限として運用されます。

 しかもこの数字は、令和8年1月23日の閣議決定で 80,000人から76,000人へ引き下げられました

 生産性向上と国内人材確保の取組を織り込み直した結果、外国人で埋める分が減らされたということです。

 枠は広がるどころか、縮んでいます。

 一方、実際に建設分野で働いている特定技能1号の人数はこうです。

時点建設分野の特定技能1号 在留者数
令和7年6月末43,599人
令和7年12月末49,323人
半年間の増加+5,724人(+13.1%)

 上限76,000人に対して、すでに 約65%が埋まっています。残りは約26,700人分。直近半年と同じペースで増え続ければ、単純計算で 約2年4か月 で上限に届きます。令和10年度末まではあと約2年8か月しかありません。

枠が尽きると、何が起きるのか

 枠は「目安」ではありません。

 建設分野の在留者数は国土交通省が定期的に把握しており、受入れ見込数を超えることが見込まれる場合には、国土交通大臣が法務大臣に対して在留資格認定証明書の交付停止を求める仕組みが分野別運用方針に明記されています。

 つまり、ある日を境に「建設分野の特定技能は新規で呼べません」という状態が制度上あり得ます。

 枠が尽きてから動いても、間に合いません。


2. 令和9年4月1日、技能実習は育成就労に切り替わります

 技能実習制度は発展的に解消され、育成就労制度が始まり、運用開始は 令和9年4月1日です。

 育成就労の目的は、技能実習のような「国際貢献」ではありません。

 3年間の就労を通じて特定技能1号の水準まで育て、その分野の人材として確保することが目的です。

 制度の骨格は次のとおりです。

  • 外国人ごとに 育成就労計画 を作成し、外国人育成就労機構の認定を受ける(期間は3年以内)
  • 監理団体は 監理支援機関 となり、許可制(許可基準は厳格化)
  • 分野ごとに受入れ見込数を設定し、上限として運用
  • 本人の意向による 転籍 が一定要件のもとで認められる

 建設分野の育成就労の受入れ見込数は、令和9年度からの2年間で 123,500人 です。

 そして技能実習とは異なり、受入企業側に新しい費用と義務が乗ります。

 ここからが本題です。


3. 【企業負担①】日本語講習100時間分の費用は、すべて受入企業持ちです

 育成就労で最も見落とされているのが日本語の要件です。

就労開始前に「100時間以上」

 育成就労を始めるまでに、外国人は「日本語教育の参照枠」の A1相当以上(日本語能力試験N5等)の水準が必要です。

 試験に合格していない場合は、認定日本語教育機関の「就労」課程で、A1相当の講習を100時間以上 受講しなければなりません。

 入国後講習の総時間数はこうなります。

パターン入国後講習の総時間過去6か月以内に入国前講習を受けた場合
A1相当の試験に 不合格(=A1相当講習100時間以上が必須)320時間以上160時間以上(入国前講習160時間以上)
A1相当の試験に 合格済み220時間以上110時間以上(入国前講習110時間以上)

就労中に、さらに「100時間以上」

 これで終わりではありません。

 育成就労の3年間のうちに、A2相当の日本語能力の試験に合格させるため、認定日本語教育機関の「就労」課程でA2目標講習を100時間以上履修できるよう、受入企業が必要な措置を講じることが求められます。

 つまり、A1相当の試験に未合格の人材を採る場合、合計200時間以上の日本語講習が制度上のセットになります。

費用は誰が払うのか

 育成就労実施者、すなわち受入企業です。

 A1相当講習・A2目標講習を提供することは育成就労実施者の義務であり、その費用負担が必要とされています。

 加えて、入国後講習に専念させるための手当の支給その他の措置も受入企業(監理型の場合は監理支援機関でも可)の要件です。

 講習中は業務に従事させられませんから、その期間は「働かない人材に手当を払いながら、講習費用も払う」ことになります。

「登録日本語教員でよい」は経過措置です

 ここは誤解が多い点なので、はっきり書きます。

 原則は 認定日本語教育機関の「就労」課程 です。

 登録日本語教員による講習は、あくまで経過措置であり、同時に授業を受ける生徒が20人以下であることなど一定の要件を満たす場合に、施行後当分の間(5年をメド)に限って認定日本語教育機関の講習を受けたものとみなされます。

 「登録日本語教員に頼めば済む」のは今だけで、恒久的な制度ではありません。

 5年後を見据えた体制づくりが要ります。なお、A1・A2相当の試験に事前に合格している人材であれば、この講習は不要です。

 入口で日本語力のある人材を採れるかどうかが、そのままコスト差になります。


4. 【企業負担②】建設分野は転籍制限2年。だから「昇給」が要件になります

 育成就労では、本人の意向による転籍が認められます。

 転籍制限期間は分野ごとに1年から2年の範囲で設定され、建設分野は2年です。

 これは受入企業にとって有利な設定に見えますが、代償があります。

 転籍制限期間を1年より長く設定する分野では、育成就労外国人の昇給その他の待遇の向上を図ることが省令上の要件になっています。

 建設分野では、これがさらに具体的に決められています。

 毎年、建設分野の育成就労の協議会において、建設業の前年の平均賃金の上昇率を基準に昇給率を設定・公表する。

 1年を超える転籍制限期間を設定する育成就労実施者は、在籍する育成就労外国人の所定内賃金を1年目から2年目にかけて、当該昇給率以上に昇給させる。

 自社の裁量で「今年は据え置き」という判断はできません。

 毎年公表される昇給率という外部基準に、自社の賃金が縛られます。

  賃金テーブルと就業規則、育成就労計画、雇用契約書を、この昇給率に耐えられる形で設計し直す必要があります。

 建設分野ではこのほかに、次の条件も課されます。

  • 建設業法第3条の許可を受けていること
  • 過去5年以内に建設業法に基づく監督処分を受けていないこと
  • 日本人と同等以上の報酬を安定的に支払い、就労期間に応じた昇給その他の待遇向上を行うこと
  • 自社と受け入れる外国人を 建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録 すること
  • 国土交通省が組織する育成就労の協議会に加入すること
  • 受け入れる育成就労外国人の数が、常勤職員(技能実習生・育成就労外国人・特定技能1号を除く)の総数を超えないこと
  • 入国後講習で 労働安全衛生に関する講習 を受講させること

転籍の条件も押さえておく

 建設分野で本人意向の転籍が可能になるのは、転籍制限期間の2年を超え、かつ技能(1年経過時までの水準)と日本語A2.1相当以上の試験に合格した場合です。

 転籍先は優良な受入れ機関に限られ、転籍先は取次ぎ・育成に係る費用を、転籍元での就労期間に応じた按分率で転籍元に支払うことになっています。

 育てた人材が抜けても、一定の回収はできる建て付けです。


5. 【企業負担③】育成就労は「特定技能に上げること」が前提の制度です

 育成就労は3年で終わる制度ではありません。

 特定技能1号へつなぐことを前提に設計されています。

 そのため、育成就労を終えるまでに満たすべき水準が決められています。

段階技能日本語
就労開始前A1相当の試験合格 または 相当する講習の受講
1年経過時技能検定基礎級等A1相当以上
本人意向の転籍時技能検定基礎級等A2.1相当以上
育成就労終了時=特定技能1号技能検定3級・特定技能1号評価試験等A2.2相当以上(建設分野)
特定技能2号特定技能2号評価試験B1相当以上

 3年間で技能検定3級レベルまで引き上げ、日本語もA2.2まで到達させる。

 これを計画的にやりきる体制が求められます。

 育成就労の内容にも、必須業務が全体の3分の1以上、安全衛生に係る業務が10分の1以上という時間配分の縛りがあります。

 「現場に入れておけば育つ」では、計画の認定も更新も通りません。

 教育の設計と記録が、そのまま受入れ継続の条件になります。


6. 技能実習を手配できるのは、いまが最後です

 ここまで読んで「負担が重い」と感じた方に、正確な事実をお伝えします。

 技能実習には経過措置があります。

  施行日(令和9年4月1日)以後も技能実習を行えるのは、次のいずれかに当てはまる場合です。

  1. 施行日前に入国し、施行日時点で現に技能実習を行っている場合 → 引き続き技能実習を行えます
  2. 施行日前に技能実習計画の認定の申請をしている場合 → 施行日以後に技能実習生として入国できる場合があります(施行日から3か月以内に開始することを内容とする技能実習計画に限ります。計画の認定自体は施行日以後になることがあります)

 この場合、適用されるのは技能実習制度のルールです。したがって、

  • 育成就労の 日本語100時間講習の義務は適用されません
  • 建設分野の 2年転籍制限に伴う昇給率の縛りも適用されません

 さらに、在留の段階も引き継げます。

 施行日時点で技能実習中の1号技能実習生は2号へ移行可能

 2号技能実習を1年以上行っている2号技能実習生は3号へ移行可能です。

 そして出口も確保されています。

 技能実習2号を良好に修了した場合(計画に従って2年10月以上修了)、特定技能1号への移行時に日本語試験が免除され、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められれば技能試験も免除されます。ただし注意点があります。技能実習から育成就労への移行はできません。 

 技能実習ルートで入れた人材は、技能実習のルールで完結させ、特定技能へつなぐ設計になります。

逆算すると、時間はもうありません

期限内容
令和8年4月15日〜監理支援機関の許可に係る施行日前申請の受付開始
令和8年9月1日〜育成就労計画の認定に係る施行日前申請の受付開始
令和9年4月1日育成就労制度の運用開始(技能実習は経過措置へ)

 2026年7月時点で、施行日まで 残り約8か月。技能実習計画の認定申請を施行日前に間に合わせるには、送出機関の選定、現地面接、雇用契約、計画作成と、逆算して動き始める必要があります。「来年考える」では確実に間に合いません。


7. 技能実習と育成就労、企業負担の違い

項目技能実習(経過措置で継続)育成就労(令和9年4月〜)
日本語講習100時間(A1相当)義務なし義務(企業費用負担)
日本語講習100時間(A2目標)義務なし履修機会の提供が義務(企業費用負担)
講習の実施主体認定日本語教育機関の「就労」課程(登録日本語教員は5年メドの経過措置)
本人意向の転籍原則なし建設は 2年経過後 に可能
昇給制度上の一律要件なし協議会が公表する昇給率以上の昇給が要件(建設)
CCUS登録必須(建設)
育成の到達目標技能検定3級等技能検定3級等 + 日本語A2.2(建設)
特定技能1号への移行2号良好修了で試験免除の道あり育成就労終了時の試験合格が前提

8. これは建設業だけの話ではありません

 ここまで建設分野を軸に書いてきましたが、制度の骨格は全分野に共通です。

  • 受入れ見込数(上限)は全分野に設定されています。 令和8年1月23日の閣議決定で、特定技能1号は19分野合計 805,700人、育成就労は17分野合計 426,200人(いずれも令和11年3月末まで)と定められ、それぞれ上限として運用されます。分野が違っても「枠が尽きたら新規で呼べなくなる」構造は同じです。
  • 日本語講習100時間の義務と費用負担は、分野を問わず育成就労の共通ルールです。
  • 転籍制限は分野ごとに1年から2年の範囲で設定されます。 建設は2年ですが、分野によって異なります。1年を超える分野では、昇給その他の待遇向上が要件になります。
  • 分野ごとの「上乗せ基準」があります。 建設のCCUS登録・協議会加入・建設業法の許可のように、事業者の範囲、受入人数の上限、加入すべき団体などが分野ごとに告示で定められています。

 つまり、自社の分野がどの条件に当たるかを個別に確認しない限り、必要な準備は決まりません。 

 建設業以外の分野でも、また技能実習・育成就労・特定技能以外の在留資格(技術・人文知識・国際業務、経営・管理、家族滞在、永住・帰化など)についても、当事務所で対応しています。


9. よくあるご質問

Q. 建設分野の特定技能の枠は、本当にもう埋まりそうなのですか。 

A. 上限76,000人に対して、令和7年12月末時点で49,323人です。残りは約26,700人分で、直近半年は5,724人増えています。同じペースなら単純計算で約2年4か月で上限に達します。

Q. 枠が尽きたら、既に働いている人はどうなりますか。

 A. 停止措置は在留資格認定証明書の交付、つまり新規の受入れに対するものです。すでに在留している方の更新とは別の話です。ただし新規補充の道が閉じることの経営インパクトは大きいはずです。

Q. 日本語講習100時間の費用は、本人に負担させられませんか。

 A. できません。A1相当講習・A2目標講習の提供は育成就労実施者の義務であり、費用負担が必要とされています。監理支援費を外国人に直接・間接に負担させないことも要件です。

Q. オンラインでの日本語講習は認められますか。

 A. 認められます。ただし双方向で同時にコミュニケーションを取れるものであるなど、一定の要件を満たす必要があります。

Q. 転籍制限を2年ではなく1年にすれば、昇給義務を避けられますか。 

A. 育成就労実施者の判断で転籍制限期間を1年とする旨を育成就労計画に定めることは可能です。その場合は1年で転籍され得るという前提になります。2年の定着を取るか、昇給の縛りを外すかの選択です。

Q. いま技能実習生を受け入れれば、そのまま育成就労に移行できますか。 

A. できません。技能実習から育成就労への移行は認められていません。技能実習のルールで完結させ、修了後に特定技能1号へつなぐ設計になります。

Q. 技能実習2号を修了すると、特定技能の試験は全部免除ですか。

 A. 2年10月以上を計画に従って修了していれば、原則として日本語試験が免除されます。技能試験は、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる場合に免除されます。

Q. 制度が変わる前に、まず何から手をつけるべきですか。 

A. ①現在の在留状況と今後3年の必要人数の棚卸し、②技能実習の経過措置に乗せられる案件の切り分け、③育成就労を見据えた賃金テーブル・就業規則の見直し、の3点です。①と②は施行日から逆算すると待ったなしです。


10. 外国人材の受入れと入管手続は、当事務所にご相談ください

 当事務所は、外国人材の受入れと入管手続を扱う行政書士事務所です。制度の解説だけでなく、申請と社内体制の整備まで一貫してお引き受けします。

 技能実習・育成就労・特定技能

  • 技能実習の手配 施行日前の技能実習計画認定申請に間に合わせるための逆算スケジュール作成、監理団体・送出機関との調整、必要書類の作成まで一貫して対応します
  • 特定技能への移行 技能実習2号修了者の試験免除の可否判断、建設特定技能受入計画の認定申請、CCUS登録の支援、分野ごとの上乗せ基準の確認
  • 育成就労への備え 昇給率に耐える賃金テーブルと就業規則の整備、育成就労計画の設計、監理支援機関・認定日本語教育機関との連携体制づくり

 入管手続全般

  • 在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請
  • 技術・人文知識・国際業務、経営・管理、企業内転勤などの就労系在留資格
  • 家族滞在、定住者、日本人の配偶者等の身分系在留資格
  • 永住許可申請、帰化許可申請
  • 資格外活動許可、就労資格証明書、各種届出

 建設業許可・経営事項審査などの建設業まわりの手続と、外国人材の受入れを一つの窓口でまとめてご相談いただけます。

 制度が切り替わる前にできることと、切り替わった後にしかできないことがあります。

 建設分野は特定技能の枠が残り約3分の1、技能実習の受付は残り約8か月。 

 判断を先送りするほど選択肢は減ります。まずは現状の人員構成と今後の採用計画をお聞かせください。

 どのルートが御社にとって現実的か、期限から逆算してご提案します。

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